恋〜彼と彼女の恋愛事情〜
「実は、純と舜が話をしてるのを聞いてたんだ」

あ、あの会話聞かれてたんだ。

「全部聞いてたわけじゃないけど、正直瞬があんなこと思ってるとは思わなかった。・・・俺に言ってくれたら良かったのに・・・」

「暁・・・家族にだから言えなかったんだよ」

「うん、それは分かってる。・・・でも、悩みも相談されない兄貴って、寂しくねぇ?」

確かにちょっと不思議に思ったんだ。
暁にだったら、不安な気持ち言っても大丈夫だと思うのに・・・。

「多分、前にあったことを引きずっているんだと思う」

「前にあったこと?」

「・・・純、あんまり良い気持ちはしないと思うけど、聞いてくれるか?」

「うん」

そう言ってしてくれた話。

「俺、中学の時に付き合ってた女の子がいて」

あ、未那が言ってた事かな?

「今日と同じように、舜を連れて3人で遊園地に出かけた。いつもなら近くのおばさんの家に舜は預かってもらってたんだけど、どうしても預かれないって言われて、女の子にお願いしたら、『いいよ』って言ってくれたから・・・」

そこまで話すと、チラッと私を見た。
私の反応を見たかったのだと思う。

胸が少し痛かったけど、心配かけないようにニコッっと笑ってみせた。

「遊園地に行ってしばらくは3人で楽しく遊んでいたんだけど、女の子が・・・」

そこまで言うと言葉を詰まらせた。

「・・・暁?」

ぐっと唇をかみ締めたのがわかる。

「女の子が『俺と二人になりたかった』って、俺と舜に嘘をついて、舜を遊園地に置き去りにした・・・」

「え!?・・ひどい・・・」

思わず、声がでてしまった。

「・・・だよな。置き去りにされた舜は、不安からか発作が起きちまって・・・滅多に起きることは無いんだけど、極度の緊張とか不安とかに襲われると、発作が起きるんだ。・・・小さな発作なら良かったんだけど、少し大きい発作で、そのまま入院になっちまって」

「・・・」

「やっと落ち着いて、学校も少しずつだけど毎日行けるようになってきた矢先の事だったから・・・すげぇ悔しくて・・・。俺がもっと気をつけていればって。・・・でも目がさめた舜が言ったのは「心配しないで」って」

暁の声が震えているのがわかる。










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