恋〜彼と彼女の恋愛事情〜

話し始めるとやっぱり思い出す。

遊園地に行って、舜を置き去りにしてしまった事。

「ひどい」

そう言った純に「だよな」頷いた。
でもそれは当時の彼女にじゃなくて、自分にだった。

あの頃、やっと受験が終わってのびのびしたかった時期でもあったし、彼女が出来て舞い上がってた時期でもあった。

正直舜の病気のことも軽視していた自分もいた。
時々『うざったいな』なんて思うこともあった。
だからあんな事になってしまったのだろう。

遊園地に戻ったときに、救急車が来ていて青ざめた。
その場に彼女を残し俺は病院へ。
目を覚ました舜は俺を責めなかった・・・。

「心配しないで」

笑顔で言った舜に申し訳なくて、自分のしてきたことが恥ずかしくて。

母親も俺を責めなかった。暁は良くやってくれたと・・・・。
俺だけが子供だった。家族を思いやれない最低なやつだった。

学校へ行った時「弟連れて来るなんて、ありえなくない?」「救急車で運ばれたりして、おおげさだっての!」「私その場に置き去りにされたんだよ」

俺はブチ切れた。
『てめえみてぇな女、こっちから願い下げだ!いつでも別れてやるよ!!ふざけるな!!!』
机を蹴飛ばし、彼女を睨み付け屋上に走った。

そのとき一緒だった洸一と聡も一緒に追いかけてきてくれた。


『ちくしょおおおおぉぉぉおお!!!』

俺は声をあげて泣いた。

彼女が全部悪いわけじゃない。俺だって最低な兄貴だった。


病院でお見舞いに行ったとき、俺の考えてることが分かったのか

「楽しみが少し伸びるだけだよ」

そう言った舜。

俺が今まで普通に生活してきたことが舜にとっては凄く楽しみなことで、
軽率な俺の行動からそれを奪ってしまった・・・。


どうしたら舜に償いができるだろう・・・ずっと考えていた。









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