咳払いのあとで

「頭良いのに、進学しないんだよねー、奈津子は。もったいない」



奈津子は早く社会人になりたいと言う。



「極めたい事、今は特にないし。何もやりたい事決まってないのに、入れる大学てきとーに入ってもさ。学費がもったいないし。それだったら、早く社会に出て稼ぎたいじゃない?後々何かやりたくなったら、その貯まったお金で勉強できるしね。家にもお金入れたいし」



奈津子の家は特にお金に困ってる訳ではない。どちらかというと大きなお家で広いお庭もある。でも最後のように思えるのは育ててくれている感謝の気持ちの表れだと、心から尊敬する。



あとは……



「まあ、なんだかんだ言っても、早く直(なお)君と肩並べたいだけだけど…ね」



前髪のピンを付け直しながら、奈津子は言う。



直君は奈津子の彼氏で24歳でバリバリの営業マン。一度会ったけど、かっこよかったなぁ。



結局私たちはあれから1時間以上しゃべって帰路についた。
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