咳払いのあとで
上がったり下がったり

「ただいま〜」


家に帰って部屋に戻らず、そのまま台所で夕食の準備をしているお母さんのそばに行く。



「クラブもしてないのに、遅かったわねぇ。また、ナッちゃんとしゃべってたんでしょ〜」


お母さんが鶏肉に小麦粉をまぶしながら、笑って言う。



「あたり〜」


「女の子はいくつになっても話すことが尽きないからね。でも、じゃんじゃん話なさい。どんなに内容の無い話だと思っても、どこに素敵なお話が潜んでいるかわからないからね」


「うん!」


「ただ、お父さんを悲しませる事だけはしちゃダメよ。お父さん泣いちゃったら、お母さんも泣いちゃうからね」


「うん!」


これは昔から言われてること。だからできるだけ、誰の話も耳をかたむけたいと思う。



今日一日は……授業もロクに聞かずダメだったけど…。反省。



「でね、実は今日この間の結果がでたんだけど…」



すぐに見せたくて、制服のポケットに突っ込んでいた成績表を出して、お母さんの目の前に広げる。

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