咳払いのあとで
とにかく返信しなきゃ。



だけど、いつものようには打てない。



『こちらこそ、気を使わせてすみません。詳しい結果はまた水曜日に報告します』



送信。



ほんっとに、私は子どもだ……。



普段は顔文字・絵文字使いまくったカラフルなメールなのに、今回は一つも使えなかった。



本当に何事もないように思ってもらうなら、いつも通り打つべきなのかもしれない。



でも気持ちを押さえて、笑った絵文字とかを使う気にもなれなかった。



あの女の人の声のおかげで、自分の中の黒い部分と、改めてどんなに先生が好きかが分かった。



だからこそ



次の水曜日に、ちゃんと、彼女がいるのか聞こう。



かなり恐いけど。



彼女さんがいたら、志望校も短大に絞ろう。



彼女さんがいたら、成績を下げないのを条件に家庭教師をお断わりしよう。



彼女さんがいたら……



いたら………



いたら…………。



「…っ、……ヤだな……」



白い座卓に、涙がポタポタ落ちた……。
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