咳払いのあとで
(な…なに……いまの)



頭真っ白で目を見開いて、先生を凝視する。



「そろそろ今日は終わり。次までにこの問題集のこっからここまでと……。あと英語も……ん?」



ようやく先生と目が合う。とたんに、顔にボボボボッと熱が上がってきた。
我に返る。



「せっ、せんせ……っ」



今の。
絶対。



先生は冷静なまま



「今の心境を英語で?」


「……ふぁっと、はぷんど……?」



“何が、起きたの?”



先生はにっこり笑って



「よくできました」



と、言った。



その後、先生は課題を山盛り置いていき「じゃ、また水曜日に」と玄関まで送った私とお母さんに挨拶して、帰っていった。



「やっぱり秋月くん、かっこいいわねぇ。お母さんあと20歳若かったら…」



と閉まった玄関の扉を見つめながらお母さんが呟く。
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