咳払いのあとで
梶村さんは満面の笑みで私に言う。
『来るって♪』じゃなーいっ!
どわわわわわっ!
どうしようどうしよう。
に、逃げ……ってどこに!?
「私、着替えてくるっ!」
誰に言うでもなく、とにかく叫んで和室を出て、自分の部屋に戻る。
絶対下で笑われてるしっ!
とりあえずメイク直さなきゃ。
一回洗顔して1から顔作りたい!
あぁ、でも今更下に降りれない。
ふっと鏡に映った自分と目が合う。
………私、笑ってる?
なんだかんだで…やっぱり会えるのが嬉しいんだなあ……。
梶村さんと先生が友達で良かった。
お姉ちゃんと梶村さんが付き合ってて良かった。
お姉ちゃんがいて良かった。
お父さんとお母さんが結婚してくれて良かった。
さかのぼるとキリがないけど、何かが違っていたら、きっと秋月先生と出会えてないんだ。
客観的に考えていると、チャイムが鳴るのが聞こえた。
完全に思考がストップする。