咳払いのあとで
たった今までの冷静さが吹っ飛ぶ。
一気にあがる脈拍。
「アオーッ、秋月来たわよー」
階段下からお姉ちゃんの叫び声。
わかってますーっ!
結局手ぐしで髪型直しただけだ。
落ち着け〜。落ち着け〜。
いつも通りでいいんだ〜。いつも通り〜。
…て、いつもってどうだったっけ?
えーいっ!
どうにでもなれっ!
部屋の扉を開ける。
と……、
「…………。」
「こんばんわ」
目の前には優しく微笑んでる、先生…。
固まる。石化と言ったほうがいいかも。
「アオちゃん?」
手のひらを顔の前でひらひらされる。
我に返る。
「あっ!こ、こんばんわ!」
ガンッ!
ペコっと頭を下げるはずが、勢いあまってまだ半開きだったドアに頭をぶつけた。
「…………っ!」
「大丈夫!?」
まさかこんな古典的な失態を見せるとは!
最悪だー。
穴はどこですかー!?。