咳払いのあとで


料理を運ぶの手伝っていたお姉ちゃんと目が合い、ニヤリと笑われた。



絶対、梶村さんとグルで遊ばれてる!



妹がせっかく諦める決心をしたというのに!



ぷりぷりしている私なんてお構いなしに、みんな席に着いて、秋月先生が買ってきたビールを注ぎ合ってる。



私とお母さんだけ、お茶。



と思っていたら、先生が後ろを向いた。カサカサ、ビニール袋を触る音がする。



そして「はい」と、私に2つの紙パックが渡された。



アップルとグレープジュース。



わざわざ呑めない私たちの分まで…?



「あら♪秋月くん、ありがとう!」



お母さんが本当に嬉しそうに言う。



私は2個とも握りしめたまま、無言でそのパック達を見つめて感動していた。



そんな風にはとってないお父さんが笑いながら言う。



「どっちも飲みたいと思ってるんだろ〜?」



ち、違います!
先生から初めてもらったモノだから、できれば2個共飲まずに飾りたいんです!

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