咳払いのあとで


「ん?そのままだけど?」



お?おおっ。
普通に返された。



そのままって……。



ボボボボッと顔の温度が上昇する。



嬉しいって…



私と電話が嬉しいって…



「それって……?」



もう、私の頭では分かりません。



先生の右手が、肩下10センチの私の髪先に触れる。


ぴきっと、体が強ばる。



真剣な瞳で、まっすぐ私を見つめる先生。



心臓バクバク。



息が出来ない。



はっきりさせなきゃいけない事があるのに…。



これで彼女がいたら、先生は遊び人だ。



彼女……。



『秋月ーっ!』



電話の声が、脳裏に響いた。



はっ、となる。



もったいないけど、やっぱりこのまま流されちゃダメだっ!!



「先生っ!」



目が潤んで視界がぼやけてくるのを、ぎゅっと瞼を閉じてやりすごす。



「……か、彼女さんって、いないんですか……?」



聞けたーっ!!



……………。


…………?



先生から反応がないので、恐る恐る目をあける。
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