咳払いのあとで


先生は、階段の方を見ていた。



「先生?」



先生の視線の先に目をむけると、階段に面した廊下から、頭が2つ。



「……っ」



声を出しそうになったところで、先生に抱き締められた。



右腕に包まれて、左手で口を押さえられてる。



「………!?」



先生はいたずらっ子の顔で、私に耳打ちした。



その内容に、無言で頷く。


そして、2人で「せーの」とアイコンタクト。



「イヤッ!ダメ、先生!」


「いいじゃん。楽しもうよ」


「ダメだって………あっ!」



バッと隠れている(つもりらしい)2人が、顔を出した。



すでに私たちは二人を見下ろしている。



「お姉ちゃん!梶村さん!」


「おまえら、悪趣味…」


梶村さんはバツが悪そうに、えへっと笑い



「だって〜、部屋のドアから聞き耳立てようと思ったら、廊下にいるんだもん。びっくりしちゃった」



と、お姉ちゃんは悪怯れもなく、階段に腰をかけたままの態勢で言う。



どっちにしろ聞く気まんまんかいっ!



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