咳払いのあとで
「アオーッ!秋月君よー」
いつものように、階段の下からお母さんの声が響く。
「はーい!今降りるー」
部屋を出て、ゆっくり階段を降りると、玄関で立ってる先生がいる。
「日曜日はありがとうございました」
と、お母さんに頭を下げていた。
私と目が合うと「こんばんわ。今日もよろしく」と優しく笑ってくれた。
なんだか泣きそうになった。
この人を、諦めなきゃいけないかもしれない…。
今日で会えるの最後かもしれない…。
大好きな、人…。
「ほら、アオ。お茶持ってって」
お母さんはお盆に、アイスコーヒーを2つ乗せて、私に渡す。
このいつものパターンも……もうないかもしれない…。
やめようかな。告白。
黙っていれば、私の受験まではバイトの教え子として、毎週会えるんだよ。
でも今の私は、色々考えすぎて、きっと勉強が手につかなくなる。
そうすると、先生に迷惑がかかる。