咳払いのあとで



私の真向いに先生。



いつも以上に、たくさん質問をする。



都度都度、解りやすく説明してくれた。



先生は自前の赤いボールペンのキャップを探す。



これもいつもの光景。



外したらすぐ本体のお尻に付ければいいのに、そこら辺に置いちゃうから、よく探してる。



私はどこにあかるか分かってる。



だけど私の邪魔にならないようにというか、気付かれないように静かにコソコソ動いてる先生が可愛いい。



この光景も最後……。



「先生、コレ?」



と、下に落ちてるキャップを拾って渡す。



「あ、ああ。サンキュ」



もちろん、たまたまだと思ってる先生は素直に受け取る。



ずっと知ってましたよ。



先生……。



先生の字、他で見ても解る自信あります。



問題集もそうだけど、このノート達も捨てれません。



私が間違えた分だけ、細かく丁寧に赤文字で書き込んでくれてる。


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