咳払いのあとで
外に出ると、涼しい風が体に当たる。
街灯がないと真っ暗な小さな公園まで、徒歩5分。
アップルジュースを一個ずつ持って、並んでベンチに座った。
「ここ、小さい頃よく遊んだ場所に似てる。なんか、懐かしー」
先生が座りながら、んーっと手足を伸ばす。
「私とお姉ちゃんはここでよく遊んでました。今でも、ふらっと来ちゃうんですよ」
「渡辺って、女だてらにガキ大将っぽいよな」
先生のいう《渡辺》は、お姉ちゃんの事だ。
「あはははっ。確かに強かったです。私はずっと後ろでくっついてるだけでした」
「なんかそれも想像できる」
クスクス、横で先生が笑う。
笑ってる顔ホントに好き。
笑顔が見れて、嬉しくなって一緒にへへッと笑っていると、フッと先生の笑い声が止まった。
「ん゛っ、んっ」と聞き慣れた咳払い。
「先生…?」
「初めてだよな。散歩しようって言い出すなんて」