咳払いのあとで

風が私と先生の前髪を揺らす。



「あ…まぁ…、えっ…と」



い、行くぞ!



言うぞ!



緊張のあまり、口の中はカラカラ。



手の中のジュースの存在は、完全に忘れている。



今日まで練りに練って考えてた頭の中の脚本は、全部白紙に戻っていた。



「なんか、悩み事?」



俯いてしまった私を、心配そうに覗き込む。



もいっちょ、頑張れ、私!!



気合いで顔を上げて、先生を見る。



「あっあぁあぁあのせんせい!」



句読点まったく無視。



「…ん?」



先生、瞳優しい。



先生の方に体を向ける。



たぶん、私の顔は怒ってるように見えると思う。



大きく深呼吸……。



「…っ、好きっ……でしたっ!」


「………」



先生の目が見開く。



い、言えたよーっ!



心臓バックバク。



興奮で鼻息が荒い。



気付かれないように俯いて、細かく息を吸う。



先生の視線が、私のツムジに刺さってるのが分かる。

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