咳払いのあとで


「…アオちゃん?」


「はいぃいっ!」



俯いてギュッと目を瞑ったまま、返事をする。



「ありがとう。嬉しいよ。でも……」



『でも……』



あ、やっぱりね。



うん!大丈夫です!



フラれるシュミレーションばっかりやってましたから!



その後どう続こうが、絶対お断りの言葉。



あぁ、でもやっぱり聞きたくないなぁ…。



今立ち去りたいけど、家庭教師を終わりにしてもらうことも伝えなきゃいけない。



「『でした』って、過去形?」


「…へっ?」


「もう違うの?」


「……あ、いえ!今でもです!!ただ、気持ち伝えたらもう会えないと思ったんで!」


「……?」


「私、フラれるんで!」


「ち、ちょっと待って」



思いっきり断言して、興奮して立ち上がったトコロで、先生に腕を掴まれストンとベンチに座らされた。



また先生は、咳払いをする。



そして…



「……俺も、好きだよ」



と、言った。
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