咳払いのあとで


「は、ハリがあるって言ってください!」



それを聞いて、また先生は爆笑する。



先生ってこんなに笑う人だったんだ…。



まだまだ、いっぱいあるんだろうな、私の知らないトコ。



「さて」



笑うのをなんとか落ち着かせて、急に真面目な顔になる。



「本当は、バイト続けてる間は、気持ち伝えないって決めてたんだ」


「…え?」



「ケジメとして、家庭教師の間はアオちゃんの成績の事だけ考えようと思ってた」


「あ…、ごめんなさい。私が崩しちゃった…」



先生は微笑んで首を横に振る。



「いや。たぶん俺もなんだかんだ言いながら、そこまで我慢できたか自信ないし」



軽く咳払い。



「まっ、いっか」



すっと先生はたちあがり、私に向かって手を差し出した。



躊躇なしに、手を添える。



そのまま、グイッと引っ張られた。



向かい合って立つ。



「これからも、よろしくなっ!」



もう感動しすぎて、コクコク頷くしかできない。



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