咳払いのあとで
帰る道すがら、先生は
「ご両親、揃われてるかな?」
と、言った。
「なんでですか?」
「ん〜。やっぱさ、付き合う事になったんだから、家庭教師は…さ」
付き合うことになった…。
付き合うことになった…!!
頭の中で『りーんごーん♪』と鐘が鳴る幻聴を聴いた。
嬉しすぎるんですけどっ!
「彼女にお金もらって教えるってのも、なんか抵抗あるし…」
彼女…。
彼女…!!
先生の一言一言に感動する。
って、浮かれてる場合じゃない。
「じゃ、先生。家庭教師辞めちゃうんですか?」
毎週水曜日の楽しみが…。
「これからも解らない事があったら、いつでも聞いてくれていいから」
そうか…。
フラれたら終わりだとしか、考えてなかった。
どっちにしても、そうなるんだ…。