咳払いのあとで


帰る道すがら、先生は



「ご両親、揃われてるかな?」



と、言った。



「なんでですか?」


「ん〜。やっぱさ、付き合う事になったんだから、家庭教師は…さ」



付き合うことになった…。


付き合うことになった…!!



頭の中で『りーんごーん♪』と鐘が鳴る幻聴を聴いた。



嬉しすぎるんですけどっ!



「彼女にお金もらって教えるってのも、なんか抵抗あるし…」



彼女…。



彼女…!!



先生の一言一言に感動する。



って、浮かれてる場合じゃない。



「じゃ、先生。家庭教師辞めちゃうんですか?」



毎週水曜日の楽しみが…。



「これからも解らない事があったら、いつでも聞いてくれていいから」



そうか…。



フラれたら終わりだとしか、考えてなかった。



どっちにしても、そうなるんだ…。


< 68 / 84 >

この作品をシェア

pagetop