咳払いのあとで
誠意


家に戻ると、みんな揃って台所にいた。



「あら?秋月、まだいたの?」



お姉ちゃんが声をかけるが、途端にニヤ〜と顔が変わった。



私に向かって、親指と人差し指をくっつけて『OK』の形にし、首を斜めに倒した。



『結果、OKだったの?』っていう無言の質問。



ニッてわらって、同じサインを返す。



「おぉ!おめでとーっ!!」



急に立ち上がり叫ぶお姉ちゃんを、二人でシーッと落ち着かせようとした。



しかし、時すでに遅し。



「ん?なんだなんだ?」



お父さんが話(?)に入ってくる。



先生が慌てて



「日曜日はありがとうございました」



と、お父さんに頭を下げる。



「いやいや。楽しかった。また晩ご飯食べにおいで」


「はい。喜んで…」



先生が咳払いをする。



「あの、渡辺さん」



真面目な顔で、お父さんを呼びかける。


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