咳払いのあとで


「実は家庭教師なんですが…」



今!?
今言うの!?



「ん?」



お父さんが優しく返事をする。



「辞めさせて頂きたいんです」



「…………」



ピシッと、一気にフロアの空気が変わる。



緊迫って、こういう事を言うのかな?



「さあさあ。お茶でも飲みながら、お話しましょ。2人とも座ったら?」



この空気を読んでるからなのか、全く天然なのか、お母さんが台所の入り口に並んで立ってる私達に、明るく言う。



「あ、そうだね!先生、座ってください!」



と、先生を空いている椅子に促す。



結局、先生と私が並んで座り、向かいにお父さんとお母さん、お姉ちゃんが丸椅子を持って来てお誕生日席に落ち着いた。



「秋月、どうゆう事?」



敢えて軽く口火を切ったのは、お姉ちゃんだった。



先生が小さく深呼吸したのが、横にいて分かった。


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