咳払いのあとで
「それが秋月君の誠意だね?」
お父さんが微笑む。
「だよねー。つまんない奴だったら、黙ってバイト代貰いながら付き合うよねー」
お姉ちゃんが会話に入る。
そうかぁ。
これが先生の誠意なんだ。
家庭教師を辞めるって聞いて、ただ単に会える時間が減ると、凹んでしまった自分の子ども加減が情けない。
ちゃんと先生は、先に話してくれてたのに…。
「ウチとしては、割り切ってバイトを続けてくれても構わないんだが…」
「いえ。自分の気持ちを優先させた時が、結果はどうあれ辞める時と決めていたもので……。本来なら受験終わるまでは我慢する事がベストだったんですが…」
先生は少し照れながら話す。
「子どもで、すいません」
「いやいや。嬉しいよ。アオとの事、そこまで考えてくれてたんだね」
お父さんが満足そうに言う。