咳払いのあとで
「やっぱりって?」
奈津子は肩をすくめて、あはっと笑った。
「大抵分かるって。口と指の違いなんて。分からないのはアオだけ…」
「な〜つ〜ぅ?」
「あははははっ!ごめんって!」
殴るフリをする私に、笑いながら防御する。
校庭では色んな部活の音や掛け声が混ざり合ってる。
「でも、そっかー…。とうとうアオも…」
「なに?」
キョトンとして聞き返す。
奈津子は意地悪な顔になる。
「もうすぐ《チュー》と《エッチ》デビューかぁ!」
奈津子の潜めない声に、トラックを走ってた陸上部の男子が振り向く。
「ぎぃやーーっ!!な、な、奈津子!!」
咄嗟に奈津子の口を手でふさぐ。
今の私の悲鳴で、校庭のほとんど全員がこっちを見た。
顔から火が出るって、こういう事か!?
奈津子がバンバン私の腕を叩く。
あ…、鼻も塞いでた。