咳払いのあとで
手を放すと、奈津子は空気を思いっきり吸って「殺す気か!」と怒った。
「だって奈津子が変な事言うんだもん!」
「変な事じゃない!大事な事よー!」
拳を挙げて興奮する奈津子。
「だって、まだ昨日の今日で、実感ないし…」
「でも、考えた事ないわけじゃないでしょ?」
「う゛っ」
そりゃあ……、先生と付き合ってるシチュエーションでの妄想大暴走は、しょっちゅうしてたけども!
「それが現実になるなんて、思ってなかったんですもの!」
「口調が変ですわよ!」
あはははっと二人で笑い合って、ジュースを飲む。
周りは何事も無かったかのように、また各々の行動に戻っている。
「やっぱり、妄想……じゃなくて、想像と現実は違うものなの?」
「あったりまえ!まず現実には五感というものがある!」