咳払いのあとで


「ほうほう」



奈津子のいつもの熱弁が始まった。



「表情にドキッとし、声にトキメキ、香りに酔い痴れ、触れて感動し、一緒においしい物を食す!」



「ほうっ!」



最後だけちと違う気もするけど……。
たぶん、思いつかなかったんだろうな……。



ツッこむと、また脱線するだろうからやめておこう。



でも、なるほどなぁ…。



視覚・聴覚・嗅覚に関しては、分かる気がする。



先生は顔と声はもちろん、なんかいい匂いするし…。



毛先に触れられた事を思い出した。



はがぁ!
そうだ!!
あの続きみたいな事が……これから起こるかもなんだ!



心臓、鍛えなきゃ!



どうやって!?



「ちょっと!アオ、聞いてる!?」


奈津子はぐらぐら私を揺する。



「奈津子しゃ〜ん。心臓の鍛え方教えてくださ〜い」


「…………はっ!?」



夕日が、私達の顔を赤く染める。


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