月と太陽の事件簿11/愛はどうだ
「…気をつけた方がいいよ、月見くん」
亜季の背中を見送りながら、木村は声をひそめて言った。
「彼女は【ティチャーズ・ペット】だからね」
「【先生のお気に入り】とはずいぶん珍しい言い回しをするんですね」
聞くところによると木村も達郎と同じ海外留学の経験があったらしい。
「そこで覚えた言葉さ」
木村は亜季のことをよく知っているようだった。
「彼女は緒方ゼミの人間だよ」
「ああ、猫好きの緒方先生ですか」
国文科の緒方健教授は猫好きで知られていた。
講義の際は必ず猫の話をはさみ、講演でも自由テーマなら猫について取り上げる。
猫の専門誌から取材を受けて、エッセイを書いたこともある。
常にニボシを持ち歩き、大学周辺の野良猫はすべて餌づけしているという噂もあるぐらいだった。
「そういった意味では月見くんと同じぐらいの有名人だね」
達郎はどういった意味かよく分からなかったが、面倒だったので追求はしなかった。
亜季の背中を見送りながら、木村は声をひそめて言った。
「彼女は【ティチャーズ・ペット】だからね」
「【先生のお気に入り】とはずいぶん珍しい言い回しをするんですね」
聞くところによると木村も達郎と同じ海外留学の経験があったらしい。
「そこで覚えた言葉さ」
木村は亜季のことをよく知っているようだった。
「彼女は緒方ゼミの人間だよ」
「ああ、猫好きの緒方先生ですか」
国文科の緒方健教授は猫好きで知られていた。
講義の際は必ず猫の話をはさみ、講演でも自由テーマなら猫について取り上げる。
猫の専門誌から取材を受けて、エッセイを書いたこともある。
常にニボシを持ち歩き、大学周辺の野良猫はすべて餌づけしているという噂もあるぐらいだった。
「そういった意味では月見くんと同じぐらいの有名人だね」
達郎はどういった意味かよく分からなかったが、面倒だったので追求はしなかった。