月と太陽の事件簿11/愛はどうだ
「お母さんが亡くなってからは、月見という名前は忘れかけていたんだが…」

達郎が入学した時、名簿でその名を見かけた緒方教授の脳裏に、淡い記憶が甦った。

まさかと思い調べてみたところ、そのまさかだった。

「20年以上もたってあの人の息子さんに会えるとはね」

教授は懐かしさと嬉しさが入り交じった笑顔で達郎を見た。

その顔に刻まれた皺を眺めながら、達郎は複雑な気分になっていた。

達郎はつい先ほどまで、亡き母の面影を持つ女性と話していた。

そして今は亡き母の記憶を持つ男性と話をしている。

どうしてこうも自分の胸をつくことばかりが続くのか。

クリスマスとはそういう日だったのかと、達郎は呪いたくなるような気持ちになった。

「ところで月見くん、僕に何か用かね?」

教授に訊かれ、達郎は本来の目的を思い出した。

正直、気分は今日の空模様なみに重くなっていたが、達郎は話を切り出した。

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