月と太陽の事件簿11/愛はどうだ
「だから緒方先生は、貴女の想いを受け入れはしなかった」
「緒方先生が月見さんにそう言ったんですか?」
うつむいたままの亜季の声に、怒りに似た感情が混じった。
「直接は何も。緒方先生は貴女に『露』と答えろと言っただけです。後はそこから推測しました」
「露…」
「国文科の貴女ならご存じでしょう。平安時代の文学作品『伊勢物語』にあるエピソードです」
その昔、高貴な女性と恋に落ちた男がいた。
ある夜、男は女を連れて逃げ、女をおぶって夜道を走った。
女はその身分ゆえ、滅多に外出したことがなかった。
女には道端の草についていた夜露さえ何かわからず、男にあの綺麗なものは何かと尋ねた。
しかし男は逃げることに必死で、女の問い掛けには答えなかった。
やがて一軒のあばら家を見つけ、そこで夜を過ごすことにした。
男は女を家の中に寝かせ自分は家の外で寝ずの番をした。
「緒方先生が月見さんにそう言ったんですか?」
うつむいたままの亜季の声に、怒りに似た感情が混じった。
「直接は何も。緒方先生は貴女に『露』と答えろと言っただけです。後はそこから推測しました」
「露…」
「国文科の貴女ならご存じでしょう。平安時代の文学作品『伊勢物語』にあるエピソードです」
その昔、高貴な女性と恋に落ちた男がいた。
ある夜、男は女を連れて逃げ、女をおぶって夜道を走った。
女はその身分ゆえ、滅多に外出したことがなかった。
女には道端の草についていた夜露さえ何かわからず、男にあの綺麗なものは何かと尋ねた。
しかし男は逃げることに必死で、女の問い掛けには答えなかった。
やがて一軒のあばら家を見つけ、そこで夜を過ごすことにした。
男は女を家の中に寝かせ自分は家の外で寝ずの番をした。