月と太陽の事件簿11/愛はどうだ
「今風に言うと自作自演というやつです」

達郎は緒方教授の言葉から、あの手紙を書いたのは亜季自身だと察した。

自ら被害者を演じ、緒方教授をそれに巻き込む。

警察や探偵社ではなく達郎に話を持ち込んだのは話を大きくしたくなかったから。

「ではなぜ貴女はそんなことをしたのか。それは貴女が緒方先生が書いたという【手紙】を目にしたからです」

『君の青い瞳は美しく、いつも僕の心をなごませてくれる。

絹のように柔らかい髪の感触は、いつまでも僕の手の中に、君のぬくもりと共に残る…』

「この文章を見た貴女は緒方先生に愛人がいると思った」

自分の想いが受け入れられなかったのは、教え子だからでも親友の娘だからでも、長年連れ添った妻がいたからでもなく、愛人がいたからだ。

「…そう考えた貴女は憤りを覚えました」

そして亜季は自作自演を思いつき、今日中の解決を希望して達郎を緒方教授のもとへ向かわせた。

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