月と太陽の事件簿11/愛はどうだ
「誰だってクリスマスにあんな話を聞けばいい気はしない。貴女は緒方先生に、ささやかな嫌がらせをしたかったんです」

達郎がそう告げた時、電話の着信音が鳴った。

亜季の携帯だった。

「もしもし」

亜季は2・3のやり取りの後、電話を切った。

「友人たちがもうすぐ着くそうです」

亜季はソファから立ち上がった。

「すみませんが今日はこれで」

亜季は淡々とした口調で言った。

感情を押し殺していることは容易に想像できた。

「葉野さん」

達郎は立ち去ろうとした亜季を呼び止めた。

「今までの話はあくまで僕が想像した話です。それをもってどうこうする気はありません」

緒方教授に言われなくても、達郎は亜季を責める気は無かった。

「ですが最後にひとつだけいいですか」

「何でしょうか」

「貴女が見たという緒方教授の手紙。あれは恋文ではありません」

達郎は先ほど立ち寄った本屋で読んだ雑誌の名前を告げた。

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