七夕に降る雨
茉莉の誕生日は七夕。

付き合い始めてから一度も一緒に祝った事がない。

何にも言わないから、別に気にしてないんだと思っていた。


「炭酸たっぷりです。」


「あ?何入れた?」


「聞きたい?」


妖しい色になっている飲み物を前に、悪戯っこみたいに楽しそうに笑った。


「海行きたいね〜。」


「海?ぜってぇ行かね。ただでさえ暑いのに、わざわざ暑い場所行くなんて馬鹿だよ、馬鹿。」


「ほんとだねぇ。」


アイスコーヒーを飲みながら笑う。

去年の夏の事。

結局、誕生日の話しはそれきり。

七夕だと思い出した時にはもう、お盆もすぎ、秋がそこまでやってきていた。



< 7 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop