コーヒーとふくれっつら
「はぁ………わざと……ね。」


視線を少しだけ上にずらす。

冷蔵庫に張られた映画のチケットが今にも落ちそうになっていた。

これ、誘おうと思ってたんだよな。

もう、終わったかな。


「なぁ、美里?」


視線を戻し、揺れる瞳を捉えた。


「泊まりに来たの、久しぶりだよな?」


突然の質問に、返事が出来ない様子の美里をそのままに、質問を続けた。


「なん日ぶりか……知ってる?」


俺は、知ってる。


「ずっと逢ってなかったよな。いっつもキャンセルでごめんな。」


慌てて首を横に振る。

コーヒーが一緒に揺れた。


「俺さ、仕事好きなんだ。」


「………うん。」


「すっげぇ楽しいんだ。」


もちろん辛いこともあるけれど。





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