コーヒーとふくれっつら
一向に飲む気配のないコーヒーを美里の手から離す。

冷たくなったカップ。

一気に飲み干し、床にカップを置いた。

空のカップが、寂しげに、カタン……と響いた。


「美里からのメールはさ、いつも俺を元気にする。」


「……違う。」


「違わない。」


カップが無くなった手をそっと包んだ。


「俺の携帯、見たことある?」


まさか……瞳がびっくりしている。


「わかってるって。誰も見てるなんて思ってないって。それができりゃ、美里、今頃ここに居ねぇかもな。ちょっと待ってな。」


ベッドに投げ棄てた携帯を手にキッチンに戻る。

さっきと全く変わらずに膝を抱えたままの愛しい探し物。



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