コーヒーとふくれっつら
初めて口に出してくれた本音。

嬉しくて、シャンプーの香りがする髪に唇を落とす。


「さっき……怒鳴ってごめんな。」


首を横に振りながら、握った手を握りかえす。

髪が揺れ、鼻先を甘い香りがくすぐる。


「恐かった?」


「……凄く。」


「ごめん。」


「私のせいだから。ごめん。」


ごめん、と謝りながら、後ろの俺をそっと振り返ってうかがった。


「ん?もう怒ってない。大丈夫です。」


「うん。…………ごめん。」


少し笑って……………涙が落ちた。





そして、落ちた涙が唇にたどり着く前に、そっと唇で涙を塞き止める。





塞き止めたはずの涙があふれて止まらなくなって、合わせた唇を濡らし始めた。


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