コーヒーとふくれっつら
「ねぇ、シャワーしないの?」


「ん〜……ねぇな。」


困った。

無いと困る。


「ねぇ、そんなに大事なメモなんだ?」


「めっちゃ大事。あれ無いと俺、クビかも。」


「え……うそ。」


なぜか不安そうにキッチンから俺を見る。


「ってくらい大事ってこと。クビにはなんねぇよ。ただ……」


「ただ?」


「その人の連絡先、やっとのことで手にいれたからさ、無くすとやばいんだよね。ちゃんとしまっとけば良かったな。」


言いながらキッチンヘ向かう。

食パンを手に立ち尽くす美里の背中に周り、腰を抱く。


「はぁ……クビになったら養ってね、美里ちゃん。」


首筋に唇を落とすと、柔らかなシャンプーの香りが鼻をくすぐった。


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