優しい告白
怖くて直ぐに前をみた。

それからは、ただ、前だけを見た。


「よぉ、来てたのか。久しぶりだな。」


私にかけられた言葉じゃない。


「ここ…だな。」


隣に座る人を感じながら、パンフレットをぎゅっと握り締めた。

そして間もなく明かりが落ちた。

始まった舞台。

ちっとも頭に入らなくて、キラキラ光るステージをただ、ただ、見つめていた。








隣に座る人の笑い声も、咳払いも、何にも耳には届かなくて……。









早く、時間が過ぎることだけを願っていた。










早く、この世界から逃げ出したかった。




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