虹に降る雨
私が不安を与えるわけにはいかない。

私が笑っても、この子たちの不安がなくなるわけではないけれど、一瞬でも笑顔になれるなら、いくらでも笑う。


「美羽ねぇちゃんはいつでも元気ですっ!さ、ご飯、行こうか?」


「うん!」


食堂へ向かう子供たちの後ろ姿をみながら、来てよかったとほっとした。


「ねぇ、美羽姉?」


ん?」


背中から少し遠慮がちに声をかけるのは、中学3年の美里ちゃん。


「来週の日曜、行く。」


「来週?急だね?」


「転勤なんだって。」


「そっか。」


不安気に拳を握る。


「見送り行くね。」


「ううん。良いよ。美羽姉、仕事でしょ?」


「仕事だけど…」


「電話……しても良い?」



< 10 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop