キミの魔法



熱が出た。

知恵熱ってやつだろうか。

頭使い過ぎなんだよ。

まじしんどい。



今日は朝から体がダルい感じはしていた。

それでもバスに乗った。

「顔色悪いよ?」

「まじで?」

「ちょっと、失礼」

そう言って俺の額に手を当てた。

その瞬間、俺の心臓が大きな音をたてた。

「熱あるんじゃない?」

俺の心臓はこんなにもうるさいのに。

しれっとした顔しやがって。

やっぱり想ってんのは、俺だけなんだなって痛感した。

「せっかく来たけど、今日は帰った方がいいんじゃない」

「触んな」

「あっ、ごめん」

イラついて手を振り払った。

亜美はその手をもう片方の手で握り、下を向いて静かになった。


そんなことが言いたかった訳じゃない。

そんな顔をさせたかった訳でもない。


熱のせいで頭がおかしいんだ。


そう自分に言い訳をして、謝りもせずにバスを降りた。









< 14 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop