キミの魔法
熱が出た。
知恵熱ってやつだろうか。
頭使い過ぎなんだよ。
まじしんどい。
今日は朝から体がダルい感じはしていた。
それでもバスに乗った。
「顔色悪いよ?」
「まじで?」
「ちょっと、失礼」
そう言って俺の額に手を当てた。
その瞬間、俺の心臓が大きな音をたてた。
「熱あるんじゃない?」
俺の心臓はこんなにもうるさいのに。
しれっとした顔しやがって。
やっぱり想ってんのは、俺だけなんだなって痛感した。
「せっかく来たけど、今日は帰った方がいいんじゃない」
「触んな」
「あっ、ごめん」
イラついて手を振り払った。
亜美はその手をもう片方の手で握り、下を向いて静かになった。
そんなことが言いたかった訳じゃない。
そんな顔をさせたかった訳でもない。
熱のせいで頭がおかしいんだ。
そう自分に言い訳をして、謝りもせずにバスを降りた。