キミの魔法
朝からすっごく緊張した。
もちろんお守りを渡すことに。
勇気を出してバッグからお守りを出し、拓真の目の前にぶら下げた。
「お守り?」
と、彼は不思議そうな顔をした。
そしてお守りを受け取り、何のお守りか確認すると驚いていた。
「大学、受験するんでしょ?」
その言葉を聞くと、驚いた顔がだんだんと赤くなっていった。
それでも笑顔で「ありがと」と言ってくれた。
私もつられて笑顔になった。
良かった、喜んでくれて。
その笑顔が好き。
来年になったら会えなくなるんだね。
その笑顔も見れなくなるんだ…。
私が南大に行くと決めたのは拓真に会うよりも前のこと。
拓真と出会って、離れたくないとも思った。
でも、そんな理由で志望の大学を変えることは出来なかった。
私はただ臆病なだけかもしれない。
自分から何かを変えることなんて、何一つ出来ないんだ。
拓真が羨ましいよ…。