キミの魔法
いつもと変わらない朝のバスの中、ふと思った。
「お前さぁ、受験生なの?」
「何今更。てゆうか今『お前』って言ったぁ」
「同い年だもんなぁ、そういえば」
そうか。受験生か。
「ちょっとぉ、さらっと流さないでよ」
「んで、どこ受けんの」
なんかごちゃごちゃうるさいのを無視して話を続けた。
「聞きたい?」
「まじうぜぇし。早く言え」
素直に聞きたいなんて言えるか。
そんな気持ちをごまかす為に口調を荒くする。
「地元は離れちゃうんだけど、南大に行きたいんだぁ」
南大?
「どこそれ?」
「ここから電車で2時間くらいかなぁ」
2時間!?遠っ。
「じゃ家出んの?」
「受かればね。一人暮らしする予定。拓真は?どっか受けるの?」
「受けねぇ」
進学してまでやりたいこともなかったし。
「就職?」
「まあ…」
一人暮らしか。
じゃあ来年はここにいねぇんだ…。