天使の卵
「うぁー マジでテンション下がるだろ これ」

べちゃーと水分がついた卵を右手で持ち、とりあえずトイレットペーパーで包む。しんなりしたペーパーがくっついて気分悪ぃ。

それをトイレットペーパーでぐるぐる巻きにして、とりあえず便器から少し離れた左脇に置く。
用を足してから この卵について考えりゃいいやな。

便座をあげて、ズボンのジッパーを下ろしかけていると、何やら声がしたから聞こえた。

「む…むぁー! な、なんですの! なんですのこれ!!
暑くて敵いませんわ!! 」

ピキパキと音を立てながら、卵が動いた…ような気がする。
いや、おい 待て。 女の声もした。 じゃなくて。
俺は今、もう準備万端っていうか、なんかもう放射中っていうか。

「ふぁ! やっと前が見えましたの…! って………」

「……」

黙る女の声と俺。見下ろす俺と見上げる卵の中の瞳。
ああ、マズイ。なんかマズイぜ。オイ。

「へ…」
「へ? 」

女の声が『へ』と言うのにあわせて『へ?』と返してみる。まぁ 無駄な行為なんだが。
俺は下半身を空気に触れたまま、女と見合ってしまい。

「へんたいですわぁぁああああ!!」


1人暮らしには十分な広さの家に響いた。


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