ブランケット

電車が早く停まって欲しい。

「…え?」

時間差で幸四郎が驚く。

「ライブの時と普段の時と雰囲気が違ったなぁって」

「あぁ…まぁ」

「…だからね?」

窓の外の景色が変わる。

紺色の絵の具を零したみたいに、黒くて少しのオレンジ。

「…芙柚といる時が、普通だよ」

「本当?」

「うん」

「絶対に本当?」

問い詰める私に、幸四郎は尚も微笑む。

「絶対に本当」

鼻筋の通ったその顔に傾いた光があたって、ドキリとする。

気まずくなって、目を逸らした。

「芙柚」

「ん?」

「片方聞く?」

イヤホンを片方差し出された。

「聞く」

…電車停まんないで。




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