ブランケット

もうすぐクリスマスになる。

クリスマスソングが流れる甘い香りのする駅前の店を一人通り過ぎる。

惨めだ。

あたしは立ち止まる予定もなかった店の前で、立ち止まった。

正確には立ち止まってしまった。

視界に入る男女二人の姿。

何も知らない人が見たら普通のカップル。

「…なんで…。」

呟いた声が真っ白な吐息に変わって消えた。

御津とクラスの女子。

店の中で、笑い合っている。

自然と足が前へ歩き出した。

見たくない?

見ちゃいけない?

どっちの思いも当てはまるこの状況に。

泣き出したい理由も見つからない。




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