ブランケット
「…ったく。」
倒れている格好なのだけど、背中が椅子についていない。
暑くなってきたあたしに唇を重ねる良壱。
なんだかよく分からないけど、良壱反対方向向いてるし。
変な感じ。
良壱は唇を離すと、あたしを引き摺るように店から出した。
「那瑠。」
「なぁに?」
「早く降りろ。」
バイクに乗ったかと思えば、もう着いていた。
良壱のお腹周りに手を巻きつけていたあたしは、手を離す。
ぐらりと視界が傾いた。
「危ねぇな。」
溜め息が聞こえる。
「…溜め息、嫌。」
「駄々っ子か?」
「…帰りたい。」
家はすぐそこだ、と思いながら良壱に手を繋がれて歩く。
…家じゃないし。