ブランケット
茨は『黒の獅子』の総長ではあるが、寡黙にはなれない。
結果、無駄話は一切しない亜利哀に茨が話しかける事になる。
「クジョーのお嬢さんと会った。」
「九条?」
「そ。あのヤーさんのとこの。」
最近見なくなった九条都のことを言っているらしい。
亜利哀は興味のなさそうに、ふうんとだけ言った。
「あんたに宜しくだってさ。」
茨はその言葉を最後に、下に転がっていた鉄パイプを持つ。
三列あるシートの一番後ろの奴らも。
それは合図なのか、亜利哀は手すりに掴まる。
車体が大きく揺らいだ。