ブランケット
早い方が良い、なんてさっきは思っていたけど。
数少ないビルの一つの前に立つと、急に勇気がなくなった。
「え…と、紅乃さん?」
名前を呼ばれ、振り向くとあたしより若い女が立っている。
と言っても、高校生。
確か…記憶を辿れば朝貴の彼女だった気がする。
「髪切ったんですね…じゃなくて、中入らないんですか?」
何も言わないあたしに、彼女は話しかけてくる。
「あぁ…うん」
一緒に中に入る事になった。
丁度休憩時間だったらしく、入り口のすぐ傍の自販機の前にドラム担当の幸四郎(コウシロウ)が座っている。
「うわっ、紅乃!?髪どうしたの髪!」