ブランケット

その幸四郎を無視して、彼女は「朝貴はどこですか?」と聞いている。

あたしも、そんな風に驚かれるとみんなに会う勇気が無くなってくるんだけど。

喫煙所に入る。

貸し切りだからか、誰もいない。

来るとするならば…。

「…うわ」

バンド内で唯一煙草を吸う千晴だけ。

「髪どうした?」

あんまり驚いてないような声で、でも本当に驚いた言葉で言う。

「切った」
「見りゃ分かんだろ」
「うん」

「なんかあったのか?」

もう、何年も前からあるよ。

どうして千晴は彼女じゃないあたしに、優しい言葉をかけるんだろう?

「つか、なんでこんなとこ入ってんだよ。向こうにみんないる」



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