ブランケット

他の女には優しい口調で話すくせに。
あたしだけは、昔から変わんない口調。

「…なんかあったのか?」

千晴があたしの頬に触れてた。
あたしの頬を伝う涙を拭ってくれてた。

…もう充分。

「大学で他になんか言われたのか?また女にリンチされたのか?」

離れなくちゃいけない。

千晴の為に。
千晴の今や未来の為に。

「紅乃?」

座りこむあたしを見る千晴の首に手を回した。

神様。
一度だけ。

もう見る事しかできない存在なら、一度だけ。

この肌に焼き付けておきたい。

しがみつくようにするあたしを千晴はちゃんと抱きしめていてくれてる。

だから一度だけ。

「千晴…」

「なんだよ、泣き虫」

「………子供出来た」

一度だけ、チャンスを下さい。



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