ブランケット

「…千晴、あたしの事好きじゃないじゃん」

まだ離れない体に、頭を寄りかからせる。

「好きじゃねぇ」
「ほら。あたしはあたしを好きな人と結婚したい」

「無理だろ」
「は?」

無理と断言出来る理由を聞いてみたいものなんだけど。

「昔っから、自分を好きで居る奴、ふってってるだろうが」

…返す言葉もない。

「…それに、俺お前の事好きじゃねぇけど。
愛してるから」

瞬間、後ろのソファーに体が傾いてそのまま座らされた。

危ないじゃん。

そう言おうと上を向くと

「紅乃は?」

問われた。

千晴が握っていた、煙草ケースを放り出す音がする。

答える前に唇が重なっていた。




愛に形なんてない。

だから、触れられないのも言葉で表せないのも当たり前じゃない?


『クレッシェンド』
鏡花水月
END.


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