春風
柚が目を覚ました。
あたしは直前まで
泣いていたせいか、
目が潤んでしまっている。
「柚…。」
「…泣くなよ、ブス。」
「誰がブスよぉっ…!
あたし、心配で心配で
しょうがなかったんだから…。」
「泣くと、
せっかくの綺麗な顔が
台無しだっつってんの。笑えよ。」
「柚…」
柚は自分が辛いときでも、
あたしを笑わせようと
してくれていたんだね。


「俺は、大丈夫だよ。
こんくらいの事で、
くたばってたまるか。」
「…ねぇ。教えてほしいことがあるの。」
「何だよ、急に。」
「今日、柚が倒れて…
何にも出来ない自分が居た。
凄く情けないって思った。
反対に、テキパキ処置が出来てた佳佑くんが、かっこよく見えた。
羨ましかった。
あたしも、柚の力になりたい。
今日みたいな事が起きた時に、
素早く対応出来る自分で居たい。」
「…解ったよ。ちゃんと教えなきゃって思ってたし。」

柚はそう言うと、起き上がった。
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