春風
柚を家へ迎えに行って、
自宅に連れてきた。
連れてくるという事は、
事前に言ってある。
「お父さん、お母さん、
お姉ちゃん。
この人が今あたしと
付き合ってる高辻 柚くん。」
「…どうも。」


すると、お母さんが
その名前に
ピクリと反応した。
「高辻…柚?
どっかで聞いた名前ね。」
ドキッとした。


最初にも言った通り、
お母さんはあの時、
あたしが病院へ行く事を
良く思っていなかった。
さらに、あたしが
毎日柚の話をする事も
気に入らなかったようだ。
最近はしてないけど、
当時は毎日のように
ゆうくん、ゆうくんと
言っていたから。


「き…気のせいだよ。」
「そう?」
何とか切り抜けた。
柚は訳が解らない、
という顔をしている。
そりゃそうだ。
話したことないんだから。
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